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シティズに勝訴 大阪簡易裁判所 平成23年1月28日判決

先日、私が訴訟代理人となっている案件で、
シティズに勝訴しました。
この事案は、平成18年1月13日最高裁判決(いわゆるシティズ判決)後に、
シティズが期限の利益喪失の約款を改訂し、
その改訂後の約款で、旧貸金業法43条のみなし弁済が適用されるか否かが争われたものです。
全国の下級審はもちろんのこと上告審(高裁)レベルでも判断が分かれているという事案です。

判決主文です。→ シティズ大阪簡裁(平成23年1月28日)

判決では、平成18年シティズ判決以降に改訂されたシティズの新契約約款について、
新約款の期限の利益喪失特約と充当特約について、債務者に約定利息を支払わなければ、期限の利益を喪失し、残額の一括請求を受けるとの誤解に基づき、債務者は支払を事実上強制されたものといえ、支払の任意性が否定され、旧貸金業法43条のみなし弁済の適用を受けないと判断されました。

本件の大阪簡易裁判所の裁判官の判断について、以下の点に特長があります。

債務者が誤解を受けたかどうかという点について、

・債務者が、仮に、約定元本と約定利息に満たない制限利息分のみを支払った場合に、どのような充当関係になるか明らかにしている。

・約定利息>制限利息の差額はすなわち、約定元本の欠損となるものの、”約定元金を支払ったことになり”期限利益を喪失しないという法律関係はきわめて不自然といえる。

・制限利息分しか支払っていないのに、結果として約定利息全額を支払ったことにされてしまうといのは、制限利息を超過した分を任意に支払うというみなし弁済とは、もはやいえない。

・そもそも、利息制限法の制限利息を超過するグレーゾーン信用取引を継続しているのに、期限の利益喪失特約は、それを担保するものではなく、制限利息範囲内での信用取引を前提とした規定となっていることの不自然さがある。(私は、シティズの改定新約款は、平成18年1月13日最高裁判決の趣旨を逸脱し取り違えていると考えます。)

・このような複雑で、不自然な法律関係は、弁護士や司法書士の法律専門家であっても、理解しがたいのだがら、法律専門家でない債務者が誤解をするのは通常といえる。

こうして、債務者は、約定利息を支払わなければ、期限の利益を喪失し、一括返済の請求を受けると誤解し、支払を事実上強制され、任意に支払ったことにはならず、また、誤解を受けなかったという特段の事情も存しないため、みなし弁済の適用を受けないと結論づけた。

本件と同事案について、裁判例の多くは、制限利息の償還表を交付していないこと、担当者が制限利息を支払っても期限の利益を喪失しないと説明したかどうかについての事実が争われていますが、本件判決は、その点には言及せず(私はそもそもその点は主張していません。)、充当後の関係が不明瞭であること、債務者は法律専門家ではないので、理解できないのが通常であることにより、債務者は誤解した、ということを強調しているように思います。

制限利息を支払った場合の充当関係についても、具体的な数値をもって計算をすれば、その不自然さが際立つのですが、

この不明瞭さゆえに一体どのように計算すればよいのかわからず、計算例は提出できませんでした。シティズにも具体的な計算例を提出するよう釈明しましたが、要領を得た回答を得ることはできませんでした。

なお、本件と同様の事案について、宮崎地裁の案件が本年1月に最高裁に係属したとの情報も入手しています(事件番号も確認済み)。

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